View of the World - Masuhiko Hirobuchi

July 18, 2014

「大陸は孤立」という見方 -

世界は思わぬスピードで変わります。4月ごろまでは、安倍首相のすることなすことがすべて気に入らない人々が、「日本はアジアで孤立している」と唱えていました。活字・電波を問わずそういう意見をよく見かけたものです。一方、保守系の論客の何人かは、「いや孤立しているのは、中国と韓国(それに北朝鮮)で、日本は孤立なんかしていない」と反論していました。私は双方の意見を等分に見くらべながら、マスコミの世界では有名で「伝説」にさえなっている記事を思い出していました。それは20世紀初めのことです。英仏海峡に濃霧が立ち込めました。ヨーロッパ大陸とイギリスを結ぶ船はすべて欠航となりました。その時イギリスの新聞デイリーテレグラフは、一面トップに大見出しを掲げた記事を載せました。「海峡に霧。大陸は孤立」というものです。日本人の目から見れば、大陸から切り離されて孤立しているのはイギリスではないか、と思うでしょう。だが当時世界一の実力を備えたイギリスではアメリカをはじめ世界各国からの物資が集まるイギリスと切り離されて孤立しているのは、ヨーロッパ大陸の方だということになります。これは気負いでも負け惜しみでもなんでもなく、ジョンブル(英国人)の誇りと自信を端的に示す記事だと評判になったものです。この記事のことが強烈に頭に焼き付いている私は、むしろにこにこしながら「日本が孤立!」「いや中韓が孤立!」という二つの意見を聞いていました。 さて中国が南シナ海で油田の掘削を行い、ベトナムと正面から対峙するようになると、国際世論はさすがに「中国は横暴」「中国は地域の平和を乱す危険勢力だ」ということをはっきりと言うようになりました。アメリカ上院も中国の拡張主義に対する厳しい非難決議を7月10日に採択しました。15日、ついに中国は石油掘削装置を撤去しました。習近平政権の大誤算でした。孤立しているのは、どうやら大陸のようです。ご参考までにデイリーテレグラフの原文は次のとおりです。 "Fog in the Channel The Continent Isolated"  

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COMMENTS

1 : 泥田の落武者 : July 19, 2014 03:44 PM

湖の騎士様、

"Fog in the Channel The Continent Isolated"
イギリス人の面目躍如と言ったところですね。これは存じ上げませんでした。

一方で、中国の掘削機の撤去は、ベトナムの大金星ではないでしょうか。軍事力は「意思」と「能力」とで量られますが、彼らの「戦争をも辞さず」という「意思」が、中国の「能力」を上回り、「意思」を挫いたと言えるのではないでしょうか。

今回の一件で、中国は世界的孤立の立場に追い込まれましたが、ベトナムの強固な「意思」があってこそ、国際社会はベトナムを支持し、中国を孤立に追い込んだのでは?ベトナムがどこかの「平和国家」のようにヘタレていたら、国際社会はこれほどベトナムを支持したでしょうか?

バトル・オブ・ブリテンでのチャーチルの「我らは最後まで戦い続ける。断じて降伏しない。」という意思があればこそ、米国はイギリスを支援し続けたのでは?

ヘタレることが平和への道であり、自国防衛の「意思」を持つことは戦争への道であり、国際的「孤立」への道という愚論・詭弁を弄する連中には、ベトナム人の鼻くそでも煎じて飲ましてやりたい思いが致します。(下品な表現申し訳御座いません。ただ、これが私の本心です。)

2 : 湖の騎士 : July 19, 2014 09:54 PM

泥田の落ち武者様 コメントありがとうございます。中国が石油掘削装置を撤去したことは、ベトナムの側に「大義」があり意志力がまさっていたからにほかなりません。日本では中国の野望と横車ぶりがこれほどはっきりしてきた今も、「話し合いで」とか「外交力で」問題を解決すべきだという考えを持つ人々がいます。しかし彼らは歴史を学ばず、外交の「実際」も知らずに物を言っているのです。イギリスの首相ネヴィル・チェンバレンはヒトラーに対して、いわゆる「宥和(ゆうわ)」(アピースメント)政策をもって臨みましたが。これが大失敗で、彼の弱気が第二次世界を引き起こしたのです。日本の独りよがりの観念論者たちは、いまでも「宥和策」がよいのだと思っていますが、それはきわめて危険な考えです。いずれにせよ、デイリーテレグラフのこの見出しは、まさに傑作と言ってよいでしょう。物事を反対の立場から見ればこうなるという見本です。残念ながら中国人にも韓国人にも、こうしたセンスが備わっていないことです。