View of the World - Masuhiko Hirobuchi

August 04, 2014

「パガナイナイ」って誰のこと? -

寄席というのは、日本の特産(?)ではありません。欧米にもこれに似た小屋があります。ニューヨークの劇場街ブjロードウェイは有名ですが、まだこうした一流劇場には登場できない劇作家や俳優は、いわゆる「オフブロードウェイ」「オフオフブロ-ドウェイ」といった小さな小屋で作品を上演したり、芸を磨いています。こういう小屋ではボヤキ漫談のようなこともやっています。外国人である私たちには、このひとひねりもふたひねりもした「ボヤキ」は相当に聴き取りにくいのが難ですが、時には非常に分かりやすい皮肉や政治風刺が語られます。今から40年以上も前の話。オフオフで聞いた漫談の中で、アメリカ人の英語をからかったものがありました。アメリカ人はアルファベットの「アイ (i) 」の音を「イ」と発音できないというのです。聖画のイコンをアイコン言い、広告のアドバーティスメントをアドバタイズメントと言うのなどは、まだ許せます。だがこの寄席芸人は辛辣な一言を放ちました。「このままで行くと、あと何十年か後には、あのバイオリンの伝説的巨匠パガニーニ(Paganini)のことも、アメリカ人は「パガナイナイ」と発音するようになるだろう」というものでした。これには客のほとんどが大笑いしました。アメリカ人のよいところは、自らの愚行を笑えることです。「この芸人の言うとおりだ。俺たちの「アイ」好みもほどほどにしないといけないな」と感じたのだと思います。時は移って5、6年前のこと。「300(スリーハンドレッド)」という映画が日本でも上映されました。この中で主人公の英雄スパルタ王レオニダスは、「レオナイダス」と発音されていました。今のアメリカでは、誰もが「レオナイダス」と発音しているのかもしれませんが、ことは紀元前のギリシャの話。押し寄せるペルシャ帝国(現在のイラン)の大軍をわずか300人の精鋭を率いて峻嶮ティルモピレーでこれを迎え討ち、全員が壮烈な死を遂げるという史劇では、「レオニダス」という呼び方が正しい気がします。なぜ今こうしたことを取りあげるのかと言いますと、「アメリカ人の歴史観が、過去のことをあまりにも現代風に解釈しすぎている」と思えるからです。日本の歴史や文化、中東の人々の発想について、実に無知な大統領や報道官が、自分たちの価値観で、非常に偏った評価を口にしていることが多く、それが日本人の心を傷つけたり、さらに大きな中東地域の紛争に繋がっていることが多いからです。とにかくパガニーニを「パガナイナイ」と発音する日だけは来ないようにしてもらいたいものです。

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