View of the World - Masuhiko Hirobuchi

September 30, 2014

土井たか子氏の「功」と「罪」を伝えないメディア -

9月28日(日曜日)に土井たか子元衆院議長が亡くなっていたとのニュースが突然飛び込んできました。これを伝えたNHKテレビは、もっぱら土井氏の功績のみを伝えました。そして氏が最も元気だったころの「日本が平和でいられたのは憲法9条のおかげですから」という発言を大きく伝えました。29日の「ニュースウォッチ9」も前日とほぼそっくりそのままのコメントを放送しました。これを見て私は「NHKの報道現場には、土井氏の発言を大きく伝えることで、自分たちの『ある思想』を民衆に浸透させたい勢力がいる」ことを痛感しました。死者を鞭打たないというのは、日本の美徳であり世界に誇るべき文化です。しかし彼女は「公人」です。生前に公人として行ったことは、客観的かつ理性的に扱われるべきです。彼女が行ったことで、日本にとって大きなマイナスをもたらしたことが多々あったことを、覚えている人は多いと思います。彼女は「情緒で国民を動かした」のです。マドンナブームにしても、「山が動いた」発言にしてもたしかに一過性の効果はありました。それを伝えることはいいと思います。しかしメディアは「功も罪も」共にに伝えるべきです。彼女の「罪」の最大のものは、湾岸戦争直前のバグダッドに乗り込み、イラクのサダム・フセイン大統領を説得してアメリカ等との戦争をやめさせようとした事件です。彼女よりもはるかに多くの情報を持ち、フセインの発想やアラブの気性についてはるかによく知っている大国が、戦争必至と見ているさなかに、バグダッドに乗り込んでことで、世界は「邪魔だ」と感じ、彼女および日本を嘲笑したのです。彼女は「誠意はかならず通じる」と思いこみ、「平和は願望によってかなえられる」と信じ込んでいました。しかしそれは「幻想」でした。彼女はこの愚行に懲りず、これを愚行だとも思わず、その後も「自分の幻想の中にある平和」を語り続けました。その影響を受けた多くの人が、いま日本の安全を危うくしていると思います。理性的な日本人は、「日本が戦争に巻き込まれないですんでいるのは憲法9条のおかげなどではなく、日米安保条約が機能しているからだ」と認識しています。大学生ともなれば、そういう認識の持ち主の方が多いでしょう。いまここで、土井氏の幻想的平和論をあらためて広めようとする人々は、戦時中に「日本は神の国だから、最後の最後には神風が吹いて米軍機はみんな海に墜ちる」と唱えていた国粋主義者たちと同じようなメンタリティの持ち主のように思えてなりません。情緒的願望で世界を見、平和を語ることの危険をあらためて感じるこのごろです。

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COMMENTS

1 : Sako : October 2, 2014 09:01 PM

お久しぶりです。先生の仰られる事に全面的に同意します。
最近「中国化する日本」を読み、神風万歳の右派と念仏平和の左派について、考えているところでした。

2 : 湖の騎士 : October 4, 2014 07:05 PM

Sako様 お久しぶりのコメントをありがとうございます。私は死者に鞭打つつもりは全くありませんが、今回のマスコミ報道は土井氏のムード的で実態のない「功」ばかりを取り上げすぎています。彼女が振りまいた「幻想的平和論」はきわめて危険です。それを意図的に増幅して伝えようとする勢力もまた、本当に危険な存在です。緊急に必要なのは、現実を正視し理性的に物事を考える習慣の定着です。

3 : 青柳武彦 : October 7, 2014 07:43 AM

賛成です。朝日は偏向・捏造報道を謝罪しましたが、NHKはどうするのでしょう。NHKの場合は「経営陣は番組内容に容喙できない」としている放送法が問題ですね。番組内容に容喙しないで
どうやって経営陣は偏向報道を是正できるのでしょう??

籾井さんも、百田さんも、長谷川さんも手の打ちようがないのではないでしょうか?? 問題社員を首にするしか手はないのでしょうか??   青柳武彦

4 : 湖の騎士 : October 8, 2014 10:46 AM

青柳武彦様 コメントありがとうございます。NHKの中には朝ドラの中に自分たちの「思想」を潜り込ませたり、ニュースを装って「信仰(時には「迷信」)」を広めようとする勢力がいます。非常に狡猾なやり方です。経営陣は番組内容に容喙できないと一般に言われていますが、それは違います。「経営委員会」と日常の業務を取り仕切る「会長」とは歴然と役割が違うのです。籾井会長はその気になれば相当に大きな権限を振るえるはずです。しかし彼は就任早々に、他の理事たちに辞表を提出させたり、慰安婦問題で軽率に私見を述べたりして、「仕事以前に」つまずいてしまいました。大事を控えてあまりにも小事を優先させ「会長の器にあらず」とされてしまいました。もっと慎重に事を運び、人心を掌握し、他の理事や局長級が「自分たちの意見」として改革案を出してくるのを待つべきでした。彼を会長に据えたのは安倍首相の失敗です。「適材」がこの任に就けば、NHKは相当に変わるはずです。政府もNHK人間も、大先輩である英国BBCの苦闘と栄光の歴史をもっと勉強すべきです。そこには、日本にとってかぎりなく貴重な教訓が含まれているからです。

5 : 青柳武彦 : October 12, 2014 09:29 AM

コメントを有難うございました。

経営委員会が番組内容に容喙できることは知りませんでした。そうであれば、今までの委員は何をやっていたのでしょう。たとえ、事後でも偏向報道にいちいちダメを出していれば、これほど何時までも偏向報道を続けることはないと思うのですが。   青柳武彦          

6 : 湖の騎士 : October 12, 2014 09:32 PM

青柳武彦様 NHKの「経営委員会」と「会長」の役割について誤解をなさっているようです。経営委員会は基本的に「日常業務については口を出しません。そのもっとも大きな役目は、NHKの日常業務を取り仕切る「会長」を選出することです。選出された会長は、NHKの日常業務を執行する最高の責任者です。当然番組内容についても彼が全責任を負うことになります。会長は人事権を持っていますから、制作や報道部門の局長を選ぶことができます。口に出す出さないは別として、自分の思想と真っ向から反対の番組製作者を放置しておくことなどはあってはならないことです。ただ籾井会長はNHKの「企業文化」というものを理解するデリカシーを欠き、自分の発言がマスコミでどう扱われるかについての想像力を欠いていました。だから法的には可能な自分の権限を行使できない状態になっているのです。