View of the World - Masuhiko Hirobuchi

January 21, 2015

「テロに屈しない」と「人命第一」は矛盾する -

恐れていたことが現実となりました。「イスラム国」に拘束されていた、二人の日本人ジャーナリストを画面に出し「72時間以内に身代金2億ドルを払わなければ処刑する」との脅しがインターネット上で公開されました。安倍晋三首相はこれに対して「日本はけっしてテロに屈することはない」と言い、一方では「人命の尊重を第一に考えて対応する」と言っています。多くの人はすでに気付いていますが、この二つの言葉はたがいに矛盾するものです。人質の人命を第一に考えるなら、身代金を支払うしかありません。それはとりもなおさず「テロに屈する」ことになります。一方「テロに屈することはない」という原則を貫けば、人質の生命は危険にさらされます。今までの米英人らを殺害した手口から見ても、その可能性は高いといえます。「イスラム国」に巨額の活動資金を提供し、さらに多くのテロを生みだす可能性の方に賭けるのか、それとも国際社会と連携し、「テロに屈しない」という原則を貫くのか? いずれにしても非常に厳しい選択です。一国の最高指導者にしか分からない苦悩の中にいる安倍さんに対して、これから様々な世論が沸騰し、それが圧力になって判断を曇らせることになるだろうと思います。深読みをすれば、あえて矛盾することを口にすることによって、首相は「イスラム国」に対して、「日本はいかようにも対応する用意がある」という含みのあるメッセージを送っているのかも知れません。私はそう思いたいです。日本国のトップが、けっして単細胞ではなく、したたかな計算によって矛盾するメッセージを放っているのだと思いたい。しかし冷静に考えれば、首相の頭はそこまで回ってはおらず、自分の言葉の矛盾にも気付いていないのかも知れません。この内閣および戦後日本にとっての最大の試練をなんとか乗り切ってほしいものです。世論が感情的にならず、あくまで理性的に反応することを希望しています。

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COMMENTS

1 : Sako : January 22, 2015 05:18 AM

日本国の首相として、国民を守る責務があります。
ただ、200億を払うと他の日本人拉致を誘発しかねないので、払わない選択が日本国民全体としては人命第一になるのではないでしょうか?
今回、ジャーナリストの方は職業的使命を持って行かれてこの様な事になって残念です。
しかし、もうひと方は戦場に戦争ゴッコをしただけの人です。成熟した日本の世論は落ち着いた見方をするのではないでしょうか?

2 : 湖の騎士 : January 22, 2015 03:13 PM

Sako様 コメントありがとうございます。人質たちが「中東に行けば、危険な目に会う可能性は高い。それでも私は命がけで行く」という覚悟で行ったのかどうかが問題です。「イスラム国」の軍隊に入ることを夢想し、日本を離れようとした北大生がいましたが、こうした軽い乗りで紛争地帯に出向く人が多いのは、非常に危険なことです。多くの良識ある国民の納得がえられるような解決を望みたいものです。

3 : 青柳武彦 : January 23, 2015 05:27 AM

 この事件は本当に悲惨ですね。小生は、安倍首相が述べている「テロに屈しない」と「人命第一」は決して矛盾するものではないと思います。今まで英国人2名、米国人3名が同様な動画で示されて、殺害されてしまいましたが、その他の欧州諸国人の人質は解放されている例も多くあります。各国とも身代金は払っていないと言明していますが、よくわかりませんね。交渉して値切って払ったケースもあったのではないでしょうか?? 解放されたケースでは、イスラム法学者、聖職者、その他の影響力のある人間の協力を最大限に得て、いろいろな方策を講じたものと考えます。
 TVでは色々ないわゆる専門家が解説をしたり意見を述べたりしていますが、さすがに『すぐに身代金を払え』と主張する評論家は居ませんでしたが、小生が卑怯なコメントと思ったのは東京財団の佐々木某というイスラム教徒と称する人間の『こういう問題が生じる危険性があるということを予め覚悟して、日本は中東支援を決めたのか』という意見でした。『覚悟があったのか』というのは、疑問・質問の形を取っていますが単なる反対のための反対論を偽装しているに過ぎません。
 何をやってもリスクはあり、想定外の事故や被害は起こり得るものですから、それについての覚悟や万全の対応策が予めない限り行動をおこすべきではないというのは、いかにも官僚主義的な発想です。予め出来るだけの対策を講じておくのは大切ですが、万全でなければならないなどというのは不可能です。そんな考えでしたら誰も先進的なことはやれません。          青柳武彦

4 : 泥田の落武者 : January 23, 2015 05:21 PM

湖の騎士様、

多分ですが、世論の殆どは「殺されても当たり前」というところではないでしょうか?確かに一部の「頭の不自由な」方々は雑音をまき散らしていますが、殆ど共感を得ていないのではないかと存じます。

我が国の行うべき事は明確です。中東の破綻国家・難民の民生支援・復興を行い、地域の安定と、テロの温床の解消を図る。これ以上でも、これ以下でもありません。この目的の為に、全ての努力は向けられるべきであり、ふらふら紛争地帯に己から出かけていく「危険音痴」の安全などにかまける「ふり」は必要でしょうが、「助かったら良かったね」程度の努力で十分でしょう。

そして、上記の支援がISの妨害の目的でもあり、これに些かでも同調する連中こそ、真の「テロ支援人物・勢力」でしょう。

日本では年間3万人が自殺しています。あくまで極論ではありますが、今回の様な「潜在的自殺」行為で2人増えても、何ほどの事がありましょう。我が国の支援でどれだけの人命が救われるかを鑑みれば、費用対効果は明確では。

5 : 湖の騎士 : January 24, 2015 04:31 PM

青柳武彦様 コメントありがとうございます。「テロに屈しない」と「人命第一」は矛盾しない、というお考えは傾聴すべきものだと思います。菅官房長官も「矛盾しない」と述べていました。しかし麻生副総理は、記者会見で身代金について聞かれ「我々はテロに屈していないのだから、身代金の出どころや払い方について検討もしていない」と述べました。これはあくまで建前を語ったものですが、普通はこちらの意見の方が説得力があると思います。イスラム教徒を名乗る佐々木某のコメントは、私は聞いていませんが、政府の足を引っ張るだけが目的の卑劣なものだと思います。こういうことを言っていたのでは、何もできません。リスクを冒しても国益が見込めるのなら、リスクを冒す覚悟をするのも為政者の務めでしょう。

6 : 湖の騎士 : January 24, 2015 04:44 PM

泥田の落ち武者様 コメントありがとうございます。日本の
世論は、マスコミが煽る方向へは動いていないと思います。たとえば昨日の後藤健二氏の母親の会見をどう見るかですが、一部の「可哀想」とのみ思う情緒派は半数に達していないでしょう。彼女は「健二はイスラム国の的ではありません」と繰り返し、「日本政府の皆さん、健二を助けてください」と訴えました。しかし「息子が自分の判断で危険地域に入ったばかりに、国に迷惑をかけ、場合によっては国民の血税である200億円以上もの大金を国家に払わせることになったのは、本当に申し訳ありません」という詫びの言葉はいっさい発しませんでした。「これ以上犠牲者を出さないためにも、ここは毅然とした態度を貫いてください」と言うべきだったという声も私の周囲にはあります。ある病院の待合室では、「自分の判断でそういう所へ行ったんだから、しょうがないわね」という老婦人たちの会話も聞こえていました。

7 : tekuniko : January 24, 2015 08:21 PM

「彼らの無事や救出を願う気持ちや、
政府への人質解放に向けた行動の要請」と、
「自分の意志で行ったのだから
最悪の結果になってもしょうがない」。

このふたつの意見は矛盾しないと思うのですが、
政府の対応を批難してる情緒的な人たちは、
後者の考えを許さないがごとく振舞うので、
世論から乖離してしまっている印象を受けます。

このしょうがないという思われている感情を理解して振舞わないと、
世論を動かす力にはなり得ないかなと。

そのしょうがないと思われている感情を理解できていれば、
あの会見で世論の感情を動かせた可能性もあったのですが・・・。

8 : 湖の騎士 : January 25, 2015 10:23 PM

tekuniko様 コメントありがとうございます。日本には「自分の意見が絶対に正しい」と思う人が多すぎる気がします。こういう人たちは、自分と違う意見の存在を許しません。たとえ反対意見が多数を占めていても、「そちらが間違っている」と非難します。マスコミのそのひとつです。選挙の結果が自社の重いどおりにならないと、選挙民が選んだ政権を批判ばかりすています。こうした精神的風土はまことに危険です。今回の人質事件で、「情緒過多の世論が政権の意思を鈍らせる」恐れは十分にあります。日本の安全は「情緒的世論によって脅かされて

います。

9 : 青柳武彦 : January 28, 2015 09:38 AM

 テレ朝の報道ステーションは、テレビを批判的に見る題材を豊富に提供してくれるので小生は比較的見ることが多いのですが、それにしても昨27日のISIL人質問題報道は、あまりの酷さに唖然としてしまった。
 古舘伊知郎と恵村順一郎が報道のシメで、「ISILの行動は批判されるべきだが、その裏には欧米諸国が勝手に国境線を定めるなどの暴挙の積み重ねに対する長年の怒りの累積があったという面もあったことも見るように、視点を変えて考えることも必要です」という趣旨のものだった。まるで、暴力団よりもひどい犯罪者集団にも「三分の理」があるということをいうようなものだ。公共の電波を利用するマスコミならば、「そういう見方をする者があるかもしれないが、それは間違いである」と主張するのが本筋でしょう。テレ朝のリベラルの本質を見た思いです。 青柳武彦

10 : 湖の騎士 : January 28, 2015 09:02 PM

青柳武彦様 再度のコメントをありがとうございます。私は27日の「報道ステーション」は見ていませんが、ご指摘の古館、恵村両氏の発言内容は「リベラル(一定の政治的意図をもって現政権の足を引っ張る)」というよりも、「適切なコメントができない二人が、昔からさんざ言い古されたステレオタイプの決まり文句(クリシェ)に逃げたもの、知的人間なら恥ずかしくて口にできないような陳腐なせりふによって恰好をつけたもの」と見るべきではないかと思います、「君たちは何年報道の実務をやってるんだ。そんなせりふは無能な先輩たちが、もう何十年も口にしてきたことじゃないか。英仏のやり方が気に入らないというのなら、その前のオスマアン帝国の時代に戻れとでもいうのか」とでも言ってやりたい気持ちになります。いずれにせよ、これは「危険なリベラル思想」というよりも、「なんとかのひとつ覚えの常套句」だと思います。ただしこの程度のコメントに感心してうなずき、「そうか、英仏はけしからん!」と思うもっと単細胞の視聴者もたくさんいるでしょう。その連中がいっぱしの「中東通」のつもりで、世論の一員となって行く危険はありますね。

11 : 青柳武彦 : January 28, 2015 11:18 PM

湖の騎士さま コメントを有難うございました。なるほど、ステレオタイプの決まり文句ですか。

>ただしこの程度のコメントに感心してうなずき、「そうか、英仏はけしからん!」と思うもっと単細胞の視聴者もたくさんいるでしょう。その連中がいっぱしの「中東通」のつもりで、世論の一員となって行く危険はありますね。

インタ-ネットをみると既にそういう趣旨のコメントがかなり出ています。「危険」が現実化しているわけですね。

12 : 湖の騎士 : January 29, 2015 11:26 AM

青柳武彦様 先ほどブログ記事を更新しました。この記事の続編のつもりです。古賀茂明という人は所詮は大衆に媚び、大メディアの喜ぶコメントをする人だと思いました。先週金曜日の「報道ステーション」での安倍批判を聴いてです。「経産省で孤立してしまったのも無理もないか」と感じた次第です。ご参考までに。