View of the World - Masuhiko Hirobuchi

March 29, 2015

ハリネズミなんかこわくない Who's afraid of hedgehogs ? -

中曽根康弘さんが首相のころ。アメリカで日米首脳会談を行って、昂揚した気分で帰国しました。記者団に囲まれ、「日本の防衛を強化し、日本列島全体をハリネズミのように要塞化し、不沈空母にしなければならない」と語りました。さあ、この発言が大問題になりました。前々から「中曽根はタカ派だ」と苦々しく思っていたメディアは、この「ハリネズミ」と「不沈空母」という表現に噛みついたのです。こうした表現は近隣諸国を刺激し、日本に対する警戒心を呼び起こす。はなはだ危険な考えだ。というわけです。中曽根さんは他国を侵略する意図などはまったく表明していないにも関わらず、この「ハリネズミ」という言い方がメディアには危険と映ったのです。この騒ぎを見ていて、私は「一体だれがハリネズミの実体を知っているのかな?」と、不思議に感じました。日本では日常生活の中でハリネズミに出会うことはまずありません。だがイギリスでは、この小動物はヘッジホッグ(生垣のブタ)と呼ばれ、ふつうの住宅地の生垣の中で生活している、「かわいらしい」仲間です。時々誤って道路へ出てきて自動車にひかれて死んでいます。そのために「全英ハリネズミ保存協会」なる団体が生まれ、「我らの親愛なる友ハリネズミ救おう」という運動が盛んになりました。協会はクリクリっとした目のハリネズミ君たちをネクタイの柄にしたり、ビールなどを飲むコップに敷くコースターにプリントしたりして、これらを売り出し、その売り上げを事務局の費用にあてています。私もミハリネズミ模様のネクタイを一本持っています。「協会」のメンバーのイギリス人からもらったものです。イギリスではハリネズミには「こわい」とか「獰猛な」というイメージはまったくありません。彼らは童話などにもたびたび登場し、子供たちにも愛されている存在です。中曽根さんもそんなことはご存じなく、本当に日本列島の防備を固めようと思って発言したのでしょう。それにしても、日本のメディアが、中曽根さんの「たとえ話」を、「総理、あなたの感覚はだいぶ国際常識とは外れていますよ。ハリネズミが恐いなどと誰も思っちゃいませんよ」とやんわりとたしなめるくらいの余裕を持ってほしかったと思います。今でもマスコミは自分たちの感覚で、本来は笑ってたしなめるべきことに牙をむいたり、逆に外国ではマイナスと思われている服装や価値観をほめそやしたりしているようです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : April 1, 2015 11:00 AM

日本のマスコミのタイプには二種類あると思います。
むやみと噛みつくか、やたらと迎合するかです。
しっかりと自分の主張を述べることがオピニオンリーダーとしての役割だと考えますが、そのような論調はあまり見られません。
ハリネズミの針も亀の甲羅ももっぱら自己防衛のために使われる物で、先生のおっしゃるように、中曽根康弘さんが言った意味をわざと?、取り違えて批判するなど、幼稚な考え方です。
先生も体験されたように、有力なマスコミの記者たちはほとんどが海外勤務の経験があるはずなのに、駐在先の国情や庶民の動向をまなばずに帰国する人が多いように見受けられます。
私の想像ですが、海外駐在中も日本人の記者の多くは仲間との交流や日本大使館の公式発表を記事にしてお茶を濁しているだけだったのだと思います。折角国際感覚を身につけるチャンスを無為に過ごしたのでは勿体ないです。

2 : 湖の騎士 : April 1, 2015 11:40 AM

悠々様 いつも貴重なコメントをありがとうございます。仰るとおり、海外に住みながら日本大使館の会見に出席し日本料理店などで仲間たちとお酒を飲んだりして過ごしている特派員たちが多いのは事実です。たしかにもったいない話です。現地の人々と交際があるとすれば、「子供を介しての付き合い」が多いでしょう。ひとつ付け加えさせていただくと、日本のメディア全体では、「海外特派員経験者の数は、日本国内のみで勤務した人の数よりも圧倒的に少ない」のが現状です。したがってどうしても「国内派」の意見や感性の方が力を持つことになります。早い話が、「社長」になる人で、国際派は微々たるものです。戦後では、毎日新聞の故山内大介氏、読売新聞の渡邉恒雄氏くらいでしょう。

3 : 湖の騎士 : April 1, 2015 11:43 AM

悠々様 コメント追加です。朝日新聞の箱島信一氏も数代前の社長でした。