View of the World - Masuhiko Hirobuchi

March 16, 2015

カエルとサソり -

中東のある川のほとり。一匹のカエルが川の向こう岸まで泳いでゆこうとしています。そこへ一匹のサソリがやってきて話しかけます。「向こう岸まで行くんなら俺を背中に乗せて行ってくれないか?」。カエルは答えます。「いやだよ、岸に着きそうになったらお前はその毒針で俺を刺すにきまってる。お断りだ」。サソリは真剣に頼みます。「そんなことは絶対にしないよ。これは約束だ。俺を信用してくれ」。カエルは断りますが、サソリはあきらめません。その頼み方があまりに真剣で誠実そうなので、カエルはついほだされて、サソリを背中に乗せてやります。長い時間をかけて2人(?)はようやく向こう岸に手の届くところまでやってきました。その時、サソリは「プスリ!」と自分の毒針でカエルの背中を刺します。苦痛にうめきながら、カエルは叫びます。「約束が違うじゃないか! この嘘吐きめ!」。だがサソリは平然として言います。「ここは中東だぜ!」。つまり裏切り、謀略、嘘、トリックなんでもありの世界なのだ。俺の言葉を信じたお前が悪い、というわけです。この地域の人間がすべてそうだという気はありません。中東には中東の守るべき掟も生活規範もあります。だがほかの世界の常識や規範でははかり知れないことが、ここにはいっぱいあるという小噺です。とくに日本人はなんでもかんでも自分たちの価値観や常識で世界を見る傾向があります。よくよく心に留めておきたい小噺です。

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COMMENTS

1 : 悠々 : March 16, 2015 10:12 PM

日本人はとかく自分の価値観は万民共通だと考え勝ちのようです。
しかし日本人の中にだって大阪、名古屋、東京、それぞれに異なった価値観があります。甲州人の通った後には云々、とか、地方によって違うし同じ土地でも諍いは絶えませんから、究極的には一人一人皆違う価値観を持っているといえます。でも日本人全般の共通項というのは見いだせると思います。
中東の蛙は気の毒ですが、アラブとスラブは特に地球単位のグローバルな価値観からは飛び抜けて異質であるという感じを私は持っています。
とにかく自分の価値観で他を推し計るということは避けるべきだと思います。

2 : 湖の騎士 : March 17, 2015 02:34 PM

悠々様 コメントありがとうございます。この小噺は誰から聞いたか忘れました。ですが中東で暮らした経験者たちは、この話は知っているようです。念のためカイロで3年ほど住んだ男性に聞いてみましたが、「誰から聞いたかは忘れたが、たしかに聞いている」とのことでした。日本人の価値観・感性はすばらしいものがありますが、どうも「他国の人々も自分と同じはずだ」と思い込む癖だけは治らないようです。このカエルと似た「騙されやすい(gullibleな)」ところがあります。気をつけたいものです。

3 : Sako : March 17, 2015 09:26 PM

近代思想は、理性を用いれば同じ結論に辿り着くとしています。フランス革命期の、本来の意味での左翼です。
日本は西欧と同じく理性主義、理性主義を取り入れ、近代国家となりました。残念ながら、近代化すらしていない連中もいる事は確かです。
「約束はしたけど、約束を履行する事を約束した覚えがない」と騙してきます。そんなサソリに対抗する為には、より一層論理の力が必要となると思います。

ハーグ陸戦協定を守る自衛隊は、国内向けには軍隊ではないと説明する様な非論理的な言動を行うと、近代人である事をみずから否定します。
長々とすみません。

4 : 湖の騎士 : March 18, 2015 09:41 PM

Sako様 コメントありがとうございます。「近代」という物差しを当てると、今まで漠然としていたことがはっきり見えてきますね。舞台を中東から極東に移しましょう。いつまでも同じことをくどくどと言い、他国に対して隣国の悪口ばかり言っている国の人々の頭には「近代」というものがないのです。日本は明治維新以来、それこそ死に物狂いの努力で「近代」を身につけてきました。テクノロジーにしても他国の技術をパクったりせず、根本のところを学びとり、みずからの血とし肉としてきました。「契約」に対する倫理感も、国のトップから一庶民にいたるまで、行き渡っていました。もっともこれは明治にいたる何百年も前から日本に根付いていたものです。しかしそうした「国際的に通じる価値も倫理も身につけないままに近代国家の仲間入りをしたつもりになっている国」があります。そこのところを冷静に見極めたいものです。カエルとサソりの話とはだいぶずれたようですが、これも貴重な「展開」だと思います。

5 : Sako : March 18, 2015 10:52 PM

極東の半島の2国、大陸の1国という、前近代のサソリとは付き合えないと思います。
先生や悠々氏の様な、現代の知識人も同様に考えられている事だと思います。
憂慮すべき大問題は、アジアインフラ投資銀行へ、欧州も参加したことです。理性主義の欧州が、リアリストの側面から前近代の国家へ近づきました。

卓越した知識をお持ちの先生と悠々氏、両氏にどうお考えになられているか、ご教示頂きたいです。
無作法な質問、申し訳ありません。

6 : 湖の騎士 : March 19, 2015 03:20 PM

Sako様 「卓越した知識」というのは、ちょっと実態とは違い「褒めすぎ」ですが、あえて愚見を申し上げます。イギリスがアジアインフラ投資銀行に参加したことは、この国一流の「リアリズム」に基づく計算があってのことだと思います。「創業者グループ」の一員となることで、中国に恩を売り、アメリカを牽制できると考えたのでしょう。問題ははたしてイギリスの見通しどおりにこの銀行が機能するかどうかです。インド・フィリピン・ベトナム・インドネシアなどの国々も根本には中国に対する不信感を抱いています。そうした条件の中で、この銀行がどうなっていくのかは、だれにもわかりません。イギリスの存在感は大きく、オーストラリア・ニュージーランドなどもこれに同調する可能性も」あります。ここから数か月がmasani midokoro desu.]

7 : 悠々 : March 20, 2015 06:51 PM

私は勉強嫌いで、体系的な勉学には縁遠い怠け者です。このブログへのコメントでも見当違いのことを書いたりして、広淵先生から、やんわり窘めらるのも度々です。
そんな私の愚見ですが、アジアインフラ投資銀行問題については、欧州の有力国が早々と参加の意思表示をしているのは、中国に勝手なまねはさせない、しっかり中から監視しコントロールしようと言う布石だと思います。
日本は石橋を叩いても渡らないお国柄ですから、大勢をの出方をみて、未だに決断が出来ないのでしょう。
国の指導者が、みんなで渡れば怖くない、方式の思考能力では情けないです。いつも出遅れて居てはイニシアチブなど取れるわけがありません。
今からでは出遅れた感がありますが、思い切った額の出資をして存在感を示すべきです。

8 : 泥田の落武者 : March 20, 2015 08:16 PM

湖の騎士様、

申し上げる程の事ではないと存じますが、中東、或いはそこに住む人々は、それほどには「素っ頓狂」ではないと存じます(隣の人達の方が私には理解の限界を超えてぶっ飛んでいます)。

中東・イスラム異質論的なある種の「黄禍論」のような議論が、どうも多い様な気が致します。ISの様なおかしな連中は、日本の「過激派」並みに一握りかと。騎士様の小話への批判などでは全く御座いませんが、やや現在の中東・イスラム異質論への個人的な?????として書かせて頂きました。

で、AIIBですが、正直、どうなるか?????では?TPPですら????ですから・・・・

ADBは米国と日本が16.5%づつ、その他諸国も5~6%(西欧諸国も含め)の出資となっています。規約も明確ですし、ガバナンスも問題になっているという話はあまり聞きません。(日本が歴代の総裁を出しているのが問題と言えば問題でしょうが・・・)

しかし、AIIBの場合、ガバナンスやら、融資政策やら何やらかんやらが、中国有利なような話になっているように伝え聞きますが、それで果たして各国がOKするでしょうか???金の出し手が増えるのはアジア各国としては結構でしょうが、「口まで出されて、手までだされる、でもガバナンスは真っ黒け」では乗り難い船ではないでしょうか。

西欧諸国がお得意の「ご都合主義」で嘴を突っ込んでいますが、商売上の利益が当然に狙いであり、「中国株式会社」の言いなりになるとは考えられません。中国と組んでアジアにインフラを売りつける算段なのかも知れませんが、今度はアジア各国が「中国・西欧連合軍」という悪夢の様な組合せを歓迎するでしょうか?或いは自分が金融危機を起こしかねない中国が、いつまで胴元でいられるでしょう?

日本はあいまい戦略と、ガバナンスの透明性を求める立場に徹するべきでしょう。ASEAN各国でも海外からの投融資に対する透明性は、以前よりも高く求められ始めています。ADBという現在の「信頼有る」枠組みを堅持するのが当面は得策かと。

9 : 泥田の落武者 : March 20, 2015 10:16 PM

度々失礼を致します。

AIIBに関する資料を、幾つかご紹介させて頂きます。

また、先程、本日の日経の社説を読みましたが、
ガバナンス面での「中国の独走を防ぐためには、まず公平で透明な統治機構」が必要であり、それが満たされるなら日本も参加するべきと書いていますが、そんな怪しい銀行に「積極関与せよ」という日経の見識には、いつもながら首を傾げざるを得ません。(中国が日本のいう事などに耳を傾けるでしょうか????)

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4566?page=1

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150316/1426493360

10 : 青柳武彦 : March 21, 2015 07:37 AM

本当にそうですね。慰安婦問題などで日本人が批判され続けるのは中東のカエルと同じ日本人の一人よがりの思い込みが原因であることが多いと思います。
例えば慰安婦問題では事実無根であるのにもかかわらず、日本人は韓国に対して謝罪を続けてきました。それは、日本人はたとえ主要な落ち度は自分ではなくて相手にあると考える場合でも、先に謝罪をするのが大人の態度であり、それが相手の反省を引き出す働きがあると考えるからです。
実際にそうした日本人の傾向はトラブルを穏便かつ平和裡に治める機能を発揮してきました。浜口恵俊のいう「間人主義」です。それが日本人の美意識でもあります。しかし問題は国際的には全く通じない事です。
韓国の中傷に国連が動かされて、国連人権委員会が日本に対して審問を行った時にも、日本は事実無根であるとはいわずに「もう十分に謝っており、女性基金を作って補償も進めている」というバカな回答をしました。国連は日本はよほど悪いことをしたのだろうと考えて、追いかけてクマラスワミ報告書やマクドゥガル報告書を日本に突き付けて非難しています。小生は昨年の雑誌「ウイル」11月号に『クマラスワミ報告・国連に撤回を求めよ』という評論を書いて、日本は湖気宇連を脱退せよとぶち上げました。強烈な支持と反対の両方の反響がありました。(ご参考まで)

11 : 湖の騎士 : March 21, 2015 10:02 PM

悠々様 再度のコメントありがとうございます。AIIBについてのご意見は愚見どころか「卓見」だと思います。(もちろんこれとは正反対の意見も筋が通っていれば尊重したいと思いますが)。思いきった投資をして存在感を示せというのはスカッと割り切れています。問題は、一度こう決めたら途中で迷わないだけの定見が日本政府にあるかどうかです。

12 : Sako : March 22, 2015 12:12 PM

皆様、大変ありがとうございます。勉強になりました。

13 : 湖の騎士 : March 22, 2015 06:30 PM

泥田の落武者様 中東をあまりに「異質」と見ることは慎むべきだと私も思います。ましてや中東の人々を西洋人がかつて東洋人を見たような「黄禍論」的に捉えることはもってのほかです。ただ警鐘を鳴らすなら中途半端であってはいけないと考えて、このカエルとサソリの話を披露しました。日本人の「世界はひとつ、人類はみな同じ兄弟」と見る信仰は度を越しており、きわめて危険です。「人間も民族もそれぞれに違うものだ」という当たり前の認識を急いで身につけないと、世界中で危険に直面するでしょう。AIIBに参加したとしても、こんなお人よしの人間観では、おいしいところはみんな中国にさらわれて、大きな痛手を負って撤退するということにもなありかねません。具体的な事実を示した貴重な記事へアクセスするアドレスをお知らせくださり、ありがとうございます。他の読者の方々も、クリックされたことと思います。

14 : 湖の騎士 : March 22, 2015 06:44 PM

青柳武彦様 コメントありがとうございます。韓国に対しては一度正面切って、「慰安婦問題についてのあなた方の日本叩きは誤っている。事実はこれこれだ」と証拠を提示して反論すべきです。しかも第三者に分かるように、できれば簡潔な英語で反撃に転じたいものです。皆さん一人一人も、ご自分の人脈を使って、「韓国人のいう慰安婦問題は事実を歪曲している」旨を伝えてほしいです。伊藤博文を暗殺した安重根を英雄として称えるお国柄を、貴方がた欧米人はどう思いますか?」と率直に聞いてみたいものです。今後とも雑誌や新聞やシンポジウムで厳しいご意見を発表なさってください。

15 : 泥田の落武者 : March 23, 2015 12:16 AM

しつこいようですが、AIIBは「中国の、中国による、中国の為の」銀行と云う本質を、見誤るべきでは無いかと。西欧諸国もこの本質を受け入れるか、或いは密約を結ぶかのいづれかでは???