View of the World - Masuhiko Hirobuchi

May 04, 2015

シカの大増殖さえ見抜けなかった「世論」 -

北海道に住む若い友人から昨日(5月3日)聞いた話です。野生のシカが増えすぎて、農作物を荒らし、森林の樹木を傷つけ、そのために森が枯れてしまうという被害が日本中で起きているというニュースは、テレビでも時々伝えられますが、北海道ではその被害はじつに甚大だということです。我々はシカの害の実態を知っても、自分の日常生活には直接響いてこないので、しばらくすると忘れてしまいがちです。しかし現に被害にあっている人々は大変です。今や野生シカは65万頭いると推定されています。この増えすぎたシカをなんとか減らそうと道庁も自治体も努力していますが、効果は微々たるものです。シカを撃つハンターも高齢化が進んでおり、かつては全道に2万人いたハンターも今では6千人しかいないそうです。2012年には、このような事態を改善すべく関係機関が協力してシカ狩りをしましたが、射殺できたシカの数は目標の数十分の一で、100頭にも満たなかったそうです。65万頭に対して数十頭です。こういう事態を招いたのはなぜでしょうか? それは一にも二にも「世論」であり「民意」です。心ある人は、今日のような事態を見越し、「早く手を打たねば危ない」と訴えました。しかし大多数の人々は「動物愛護」とか「殺されるシカが可哀想だ」とか反対意見を唱えました。その結果「撃つのはオスだけにせよ。メスは殺してはならない」ということになったそうです。「メスまで殺せば野生のシカが減る恐れがある」という理由からでした。この見通しがいかに誤っていたかは、ご存じのとおりです。撃たれる心配のなくなったメスは、次々に子供を産み、今日の惨状となった次第です。「なんだ、シカの話か! 自分には関係ない」と思う人は、想像力が乏しすぎます。私はこの話を聞いて「世論(民意)の恐ろしさ」といものを、つくづく感じました。世論はわずか二、三十年先の未来も予測できないのです。今、日本の安全について、人々はそれぞれに自分の意見を述べています。マスコミの主張を真に受けて、日本が戦争に巻き込まれると心配している人が過半数を占めています。しかしこうした意見のほとんどは、「直感」あるいは「感情」によるものです。ここ十数年の間に、世界および日本の周辺で起きている目に見える変化をよく見て、この厳しい変化の中でどうすれば自分たちは安全に暮らしていけるのかを、、「理性的に」考えた上での結論ではありません。「世論」は、明らかに誤っています。「これが民意だから、政治はそれに従うべきだ」という意見は本当に危険であり、「暴論」す。世論は野生のシカの大増殖さえ見抜けなかったのです。この複雑きわまりない世界の中で生き延びてゆくためには、情報と知識・先見性が欠かせません。街頭インタビューに答える「世論の代弁者」たちに、そうしたものが備わっているとはとても思えません。「自分の意見表明が、国と民族の運命を危うくしているかも知れない」という自覚が、今ほど必要な時はないと思います。政治家はもっと辛抱強く人々を説得する必要があります。そうした誠実な努力を重ねたあとで、ときには「世論」に反することをあえて行うだけの勇気が必要です。今まで自国民を守り抜いた世界の指導者たちは、みんなそうしてきたのです。

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COMMENTS

1 : 悠々 : May 5, 2015 08:58 AM

鹿の増殖振りはすさまじいです。イノシシも暴れ回っています。
私の好きな花のヤマユリは野山ではほとんど見られなくなってしまいました。ヤマユリは人の育てている物しか生き残れそうにありません。我が家に庭にもヤマユリがあります。イノシシは来ませんがネズミがゆり根を食べてしまうのでその対応も大変です。
鹿や猪が異常増殖したのは天敵であるオオカミを駆逐してしまったからです。海外ではオオカミを他国から買って放したらかなりの効果が出たと聞きました。日本でもオオカミを使う以外に鹿・猪を適正数に戻す事は出来ないでしょう。オオカミが人を襲うというのは皆作り話で牧畜業者が意図的に流布させたという事も聞きました。
オオカミを放すなどと言うと世の識者と称する輩がなにやら喚き打数とは思いますが早急に実施すべき施策だと思います。
話が飛びますが、今孟宗竹の繁茂も大問題です。房総の山などほとんどが孟宗竹に覆われてしまいました。孟宗竹は中国からの帰化植物ですから人の手が入らなくなると天敵が居ないから生まれ故郷のお国同然の傍若無人な振る舞いに及んでいるのです。

2 : 青柳武彦 : May 5, 2015 06:11 PM

 このシカの話は、まさに民主主義の欠陥を具現化していますね。民主主義の最大の欠陥は衆愚ですから、衆愚の弊害を阻止することが、民主主義を護ることになります。しかし、それに反対して「民意を無視するのか」、「それで民主主義といえるのか」というのがバカな人権主義者の常とう句です。こうした傾向が、シカの数を増やし、悠々さんが指摘する孟宗竹を増やす結果になっているものです。”世論”は決して責任を取りませんが、”世論”というのは間違う方が多いという真実を世間は知るべきでしょう。      青柳武彦

3 : 湖の騎士 : May 6, 2015 03:27 PM

悠々様 コメントありがとうございます。エゾシカについての拙文から、他の有害動物さらには孟宗竹の増えすぎにまでご言及いただき、大変参考になりました。シカの対策用には、オオカミを輸入するしかないと私も思います。そこで邪魔をするのが、一部の「識者」であり、マスコミでしょう。しかし苛酷な現実はきれいごとを唱えているかぎり解決できません。日本は「世論」によってますます危険な淵に追い込まれていく気がします。

4 : 湖の騎士 : May 6, 2015 03:43 PM

青柳武彦様 コメントありがとうございます。民主主義というのは、衆愚の意見をことごとく尊重してよいというものではありません。こんなことは民主主義の先進国では「常識」であり、大衆も自分たちの限界を心得ています。一応意見を言ったあとは、The Best and the Brightest の人々の判断とリーダーシップに従うのが賢明かつ安全だということを知っています。まさに成熟した大人の社会です。日本はメディアを筆頭にいつまでも子供じみています。本当に恐ろしいことです。メディアも「有害な識者たち」をいい加減に排除すべきです。

5 : Sako : May 6, 2015 07:19 PM

福岡伸一氏は、動的平衡という概念を多用されます。
鹿の増加は、本来の生態系が、人の減少によって動的平衡が回復したものに思います。

また田辺元氏は、「自然はどこまでも内在的な原理によって生成変化している」と述べています。

押す力が弱ければ押し返され、強ければ反発は別の形態をとる様に思います。力の均衡は、動的なもので常に揺れ動いています。
昔の最良な均衡は、今の不均衡になるかもしれません。レッセフェールで駄目なら、政治の介入が必要です。

しかし残念ながら、政治は対処療法でしかなく、想像力はありません。想像は思考から生まれ、思考は言語から生まれます。
政治家を動かす世論、大衆の言語力が落ちているのではないでしょうか?
サルトルは文学は役に立たないと言いましたが、文学こそ力を持つ様に思います。

6 : 泥田の落武者 : May 6, 2015 10:10 PM

湖の騎士様、

先日、銃刀法に関する話をしていたのですが、警察や国民の銃の所持等に対するある種の偏見は困りものですね。何やら持っているだけで犯罪者・危険人物扱いだそうです。(といってそこいら辺に銃がごろごろというのも困りものですが・・・・)

軍事・軍備もそうで、そういう知識がある、関心があるというだけで、危険人物・軍国主義者扱いですからね。逆に知識が在る人間の方が、戦争・紛争の回避には熱心なのですが。(単なるオタは違うケースもありますが・・・)

で、上記の様な状況を進歩的文化人とか、有象無象の輩が助長し、「平和、平和」「九条、九条」と唱えれば戦争が起きないかのように触れ回る。(これは宗教ですね!!)そして思考停止・・・・

そも民意とは「感情」では無く「理性」に基づくもののはずです(土台無理な話かも知れませんが)。感情に基づく多数決が民主主義であるなら、国民を洗脳する能力の大小が民意を決し、政治を決定します。それならば、例えば「反中」プロパガンダをガンガン流し、国民の「対中感情」を悪化させれば事は簡単です(すると今度は「地球市民」とかが湧いて出て、ヘイトだ~~~」と騒ぐでしょうが)。

いい加減、声の大きい者の勝ち、的な言論状況から脱したいものですが・・・・・・・

7 : 湖の騎士 : May 7, 2015 03:30 PM

Sako様 コメントありがとうございます。久しぶりに哲学的な考察に出会いました。シカの増殖をこういうふうに説明する人というのは、いまどき少ないでしょうね。サルトルは文学は役に立たないと言ったそうですが、10年ほどまえに武庫川女子大の女性の教授が「文学こそ最強の実学」という意見を述べていました。日本の政治家の言葉に力がないのは、文学的素養がなさすぎるからではないでしょうか。ドゴールやチャーチルが危機に臨んで発した言葉は実に文学的で、それが国家の危機をどれほど救ってきたか、はかり知れません。たぶん意図されたこととはだいぶ外れたお礼になったことでしょうがーー。

8 : 湖の騎士 : May 7, 2015 03:43 PM

泥田の落武者様 コメントをありがとうございます。武器や軍備について関心がある人を「右翼」だとか「軍国主義者」と極めつける輩は「無知に基づく正義感」を振り回しているのです。今のような危機的状況の中で、戦争を防げるのは、軍事知識を持った指導者だというのは世界の常識です。ミーハー的な平和論を唱える人々は、おそらくスイスが大好きです。そして「日本は東洋のスイスにならなければならない」と叫びます。だがスイスは国民皆兵の国です。各家には政府から貸与された銃が置いてあり、一旦有事の際にはその銃をとって国防のための兵士にならなければなりません。多くの家の地下には核シェルターがつくられています。緊張感でピリピリしている国です。そんなことも知らないで、スイスに憧れスイスを礼賛する日本人は本当に危険きわまりない存在です。

9 : 泥田の落武者 : May 9, 2015 03:41 PM

湖の騎士様、

これは威力業務妨害にあたる可能性が極めて高いと思います。一度、警察、弁護士の方などにご相談されては如何でしょうか?(警察は上の方に知り合いが居りますので)

そも、ここは言論の場であり、この様な下らぬ破壊工作を行う輩は、徹底的に排除・糾弾されねばなりません。
大方、普段は「言論・表現の自由ガーーーーーーー」とか騒いでいる糞ったれ連中の片割れでしょうが。

10 : 泥田の落武者 : May 10, 2015 12:49 AM

おい糞ども、警告はしたぞ。
IPアドレスから逆探知は簡単だぞ。何なら知り合いにハックして貰おうか???それとも警察が良いか???

バックがばれると楽しみだな‼

11 : 湖の騎士 : May 10, 2015 10:57 AM

泥田の落武者様 愚かで卑劣な者たちへの「警告」をしていただきまことにありがとうございました。今朝数えたところでは、400通ほどの「妨害コメント」が来ていました。今までにも何度かこのようなことがありました。その都度削除してきましたが、今回は目に余ります。ご指摘のように「特定の政治的意図を持った集団」の仕業だと思います。ご警告が利いたのか、約380の妨害コメントが消えました。今度来たら「警察」の手を煩わせたいと思います。その節はよろしくお願いいたします。