View of the World - Masuhiko Hirobuchi

January 18, 2016

肉ジャガとイスラム国 -

10年ほど前の話。40代くらいの主婦の方々と知りあいになり、ご自分のブログのアドレスをいただきました。友人から紹介された人たちとあって、私も誠実にアクセスしていました。すぐに気付いたのは、そこに登場するテーマがほとんどすべて日常生活を扱ったものだということでした。実家から歩いてゆける距離に住んでいるので、今日は「肉ジャガを作って母に届けた」といった調子です。はじめは自分の不得意な」(?)領域の話なので、若い主婦の生活感覚の表れであり、これも貴重な体験だと思って、コメントを寄せるようにしていましたが、ほぼ毎回同じようなト-ンで終始しているので、さすがに「これはちょっと(自分の関心とは)違うな」と思うようになりました。そしてブログからは自然に遠ざかるようになりました。肉ジャガがカレーになったり、ハンバーグになっても、扱っている「事柄の本質」は同じだったからです。この人たちは、世界が金融危機に陥ろうが、超高層ビルがテロリストに破壊されようが、自分には「遠いこと」のようでした。とにかく関心事は食べ物のことであり、母親の健康であり、ご近所で起きている出来事でした。私はそれもよいではないか、これが日本の現実なのだと自分に言い聞かせてきました。自分の関心が肉ジャガ的なものからは遠く、アラブや欧米に飛びすぎていることも自覚していました。しかし一昨年あたりから、イスラム教徒のテロが目立つようになり、日本人がアルジェリアをはじめシリアなどで何人も殺され、「イスラム国」を名乗るテロ集団が出現するに及んで、「肉ジャガとカレーライス」の日々だけでよいのか? と次第に思うようになりました。この複雑な世界で日本が生き延びるためには、どうすればよいのかをご一緒に考えてください。

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COMMENTS

1 : Sako : January 18, 2016 10:02 PM

国木田独歩の「牛肉と馬鈴薯」を思い出しました。
イスラーム国は、地上と神の国と一対となる一種の神権国家を目指しているのだと思います。史上最悪の連中が、彼らの理想を求めています。
翻って日本では、国家意思や国民の意思というものが曖昧模糊としています。あるのは対処療法的なものしかなく、場当たり的なものです。
ポストモダンの思想によれば、現代人は、大きな物語を捨て小さな差異を延々と追い求めているとしています。
先生が言われていた女性は牛肉党の成れの果てで、イスラーム国は馬鈴薯党の狂信者ではないでしょうか?
我々は牛肉と馬鈴薯を一緒に食べねばならないと思います。

当方、仕事でコラムを書き、今回URL欄にpdfのURLを記入させて頂きました。
駄文ではありますが、先生に読んで頂けると幸いです。

2 : Sako : January 18, 2016 10:06 PM

申し訳ありません。謝って、3回も同じ文を投稿してしまいました。大変失礼致しました。

3 : 湖の騎士 : January 20, 2016 11:26 AM

Sako様 コメントありがとうございます。この記事から国木田独歩へと連想が飛ぶ人はあまり多くはないでしょう。感嘆したといっても誇張ではありません。私の頭の中はもっと単純です。「ごくごく身近なもの」「目に見えるもの、耳で聞けるもの、手に触れうるもの」にしか関心がない人々、自分の生活圏せいぜい半径1キロくらいで起きていることにしか関心がない人を「肉ジャガ」で代表させ、はるか何千キロも離れている地域で起こってはいるけれど、それがやがては世界および自分の身に売りかかってくる危険にまで想像が及ぶ人を「イスラム国」で代表させたつもりでした。もちろんはるかな中東にまで頭が回り、人一倍速く危険を察知する人々が多い方が、世界と日本の平和につながることは言うまでもありません。お書きになった記事を拝読しました。平易な文章で、非常に説得力がありました。他の読者の方々のために、近くアクセスの仕方をご紹介するつもりです。

4 : Sako : January 20, 2016 09:43 PM

ご多忙の中、ご高覧頂き本当にありがとうございます。
先生の様なプロの方に私の駄文をご覧頂くだけでも稀有なことですが、お褒めの言葉まで頂戴し、非常に恐縮いたします。
厚かましい依頼を受けて頂き、ありがとうございました。

5 : 湖の騎士 : January 22, 2016 09:42 PM

Sako様 ご丁寧なお礼を言っていただき、私の方こそ恐縮しています。感想は本音です。読者の立場を考えて、分かりやすく書いておられると感じました。