View of the World - Masuhiko Hirobuchi

June 24, 2016

離脱派の心中にある反欧感情 -

EUを離脱するか、それとも残留すべきかを問う英国の国民投票が行われました。結果はご存知のとおり離脱派の勝利となりました。この問題を扱う日本のテレビの斬り口について「まことに不満だ。どの局も同じようなことしか言っていない。掘り下げた論評がひとつもない。貴方はどう思うか?」という電話が、イギリスで4年ほど暮らした元テレビ局員の友人からかかってきました。5日ほど前のことです。私は自分なりの斬り口で、考えを伝えました。「大変参考になった」とその人は喜んでくれましたが、自分のブログにそのやり取りを載せる時間と意欲が不足しているうちに投票が終わってしまいました。ここで皆様が今後EUおよびイギリスを見てゆく上で、すこしはご参考になるかと思われることを3点だけ列挙させていただきます。
1.根強い反欧州大陸感情  EU離脱派は英国民の間に昔からある「反ヨーロッパ大陸感情」に訴えた。この「昔から」というのは、すくなくとも210年くらい前です。ヨーロッパ諸国をほぼ制圧したナポレオンは、次の標的として、イギリス侵攻を計画していました。イギリスのいくつかの大河の河口には、フランスの軍艦が入ってこられないように、両岸に鉄の杭が埋め込まれ、杭と杭の間には太い鉄の鎖が張り渡されました。今でもポーツマス(ポート河の河口)などにはこうした杭が残っています。「災い(わざわい)は大陸からやってくる」という、皮膚に染みついた嫌悪感と恐怖感は、とくに非インテリ階級の間に根強く残っています。
2.理性よりも感情に訴えた離脱派  EUに残留すべきと考えた人の多くは、「理性的に物を考える人々」でした。彼らには残留のメリットと離脱が生み出す大ダメージがはっきりと見えていました。そこで彼らは国民の理性と良識に訴えて、この闘争を勝ち抜こうとしました。しかし離脱派は、もっと具体的な、民衆の情緒に訴える方法を選びました。東欧諸国(旧ソ連圏)からの移民が英国人の仕事を奪っているとか、英語を話せない移民が増えたために、暮らしにくくなった、というような、誰でもが理解できる争点を選んだのです。理性と感情が争えば、感情が勝利することが多いものです。理性派は英国民の民度を買いかぶりすぎていたと言えます。これは日本にも当てはまることです。
3.「大陸は孤立する」というメンタリティ  これも昔から根強い国民感情です。少し解説が必要ですので、これについては改めて解説させていただきます。

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COMMENTS

1 : Sako : June 26, 2016 08:43 AM


毎年年初に、ユーラシアグループの10大リスクが発表されます。

改めて見返して見ると、イギリスの離脱確率は少ないと予想していましたが、「閉ざされた欧州」をリスクの2番目にした慧眼に脱帽します。
「大衆迎合主義が一層大きなうねりとなって欧州を席巻する」との予想は的中しています。

http://www.eurasiagroup.net/download/research-highlight/Top%20Risks%202016%20Japanese

先生の言われる、歴史の流れも今回のニュースを見るにあたり考慮するべきだとのお考えには、目からウロコが落ちました。
脳裏に浮かぶことしかありませんでした。

竹村健一氏が過去に言われた様に、世の中は縦と横に見ないといけないなとも感じました。

2 : Sako : June 26, 2016 08:45 AM

脳裏に浮かぶことすらありませんでした。
の誤字です。失礼しました。

3 : 湖の騎士 : June 26, 2016 10:32 AM

Sako様 コメントありがとうございます。国民投票から2日が経ちましたが、相変わらずテレビに登場する論客は、見当はずれのことをしゃべっています。イギリスの非インテリたちの気持ちというものが全く分かっていず、「自分の感性と価値基準で」物事を論評し、近未来を予測しています。せめて「現地の発想」の半分でも取り入れる気になれば、もっと説得力が出てくるでしょうが、それをしない人々です。ブログの本文の3番目に書いた、「大陸は孤立するという考え」についての解説は、火曜日(28日)までには行いますので、よろしくお願いします。